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1つの問題から考える経営

※最初にお伝えしたいことがあります。

この投稿は、現在報道されている全東信の件を利用して注目を集めることや、当事者や影響を受けられた企業を批判・否定することを目的としたものではありません。

被害に遭われた企業や関係者の皆様には心よりお見舞い申し上げます。

一方で、この出来事を「一企業だけの問題」として終わらせてしまえば、日本全体として同じことを繰り返してしまうのではないか。そんな危機感から、一人の経営支援者として感じたことを書きます。



大きな問題が起きるたびに、日本では「再発防止」が叫ばれます。

もちろん、それはとても大切なことです。

しかし、多くの場合、議論の中心になるのは、

「どうやって今回と同じことを防ぐか」

という対処療法です。

もちろん目の前の火を消すことは必要です。

ですが、それだけでは十分ではありません。

経営には、目先の対応を行う短期的な視点と、数年後、十年後を見据える中長期的な視点の両方が必要です。


今回の出来事から私が考えたのは、「事業の脆弱性」という視点です。

もし売上を計上するための重要な仕組みを、一つの決済サービスに大きく依存していた企業があったとしたら、その影響は計り知れません。

今回は全東信という出来事でしたが、これは決して特定の企業だけの問題ではありません。

もちろん、その企業を責めるつもりはありません。

ですが経営という視点では、

「一社への依存リスクをどこまで認識し、備えていたか。」

という問いは避けて通れないと思います。

そして、この問題は決して他人事ではありません。


例えば、

一社への売上依存。

一人の営業担当への依存。

一人の技術者への依存。

一つの商品への依存。

一つの仕入先への依存。

経営者への過度な依存。

これらはすべて、会社の事業継続を脅かす「事業の脆弱性」です。

実は、このような「事業の脆弱性」は、多くの中小企業で決して珍しいものではありません。


さて、この議論の中で、BCP(事業継続計画)というものを出させていただきます。

BCPは、災害対策だけではありません。

私は、BCPとは

「企業活動に重大な影響を及ぼすリスクが発生した際に、中核事業をいかに維持・早期復旧させるかを考える計画」

だと考えています。

言い換えると、「会社が止まる可能性のあるリスクを洗い出し、その影響を小さくするために、平時から備える経営のための計画」

だと考えています。


BCPという言葉は知っていても、「災害対策の計画でしょう?」という認識の方が少なくありません。

そのため、

「災害が来るかわからない。」

「時間がない。」

「難しそう。」

と後回しにされがちです。

さらに、簡易版である事業継続力強化計画も、補助金や保険料軽減のためだけに作成されるケースが多く、本来の目的が十分議論されているとは言えません。


私は、BCPは災害対策にとどまるものではないと考えています。

「もしこの取引先がなくなったら。」

「もしこの社員が退職したら。」

「もしこの商品が売れなくなったら。」

「もし社長である自分が明日から会社に来られなくなったら。」


私はBCPとは、

「当たり前が当たり前でなくなった時でも、会社が止まらないようにするための準備」

だと思っています。

リスクを分散し、会社の体質を少しずつ強くしていくことが重要です。


実は、この「事業の脆弱性」が一気に表面化するタイミングがあります。

企業における「一つの節目」は、社長が交代する時、つまり事業承継のタイミングです。

語弊を恐れずに申し上げると、事業承継のタイミングでは、たくさんの膿が出てきます。

後継者がいないから承継ができないのは、もしかしたら表面上の課題なのかもしれません。

もっと奥に、根本的な原因があるのかもしれません。

普段から中長期的な視野に立つことが求められます。

その積み重ねが、事業承継の時に「膿」を少なくしていくことに繋がります。


ここまでの議論で、BCPがあれば100%安心、安全か?という疑問に対しては、明確にNOと回答いたします。

BCPがあっても、100%状況改善にならないでしょう。

必要なのは、BCPという「紙」を作ることではなく、BCPを考える習慣を会社の文化にすることです。

特に、業務の棚卸というものが大変有効であると考えます。

それにより、事業の脆弱性が見えてきます。

そのプロセスを有効活用すれば、様々な「戦術」としての選択肢が生まれてきます。


「戦術」だけで良くなるのは一瞬です。

きちんと「戦略」的に「戦術」を活用する必要があります。

そこが抜けてしまっているケースがあります。

BCPを考えるプロセスは、経営戦略を考える上でも非常に有効です。


日本企業には、「今忙しいから後で考えよう」という空気が少なからずあります。

売上。

資金繰り。

人手不足。

目の前の課題への対応に追われるのは当然です。

しかし、目先の課題だけを追い続けていると、将来、より大きな代償を払うことがあります。

だからこそ私は、

「急がば回れ」

という言葉を大切にしています。


一度立ち止まり、

会社の強みを整理し、

弱みや依存関係を見つめ直し、

リスクを整理し、

経営理念や判断基準を明確にする。

こうした一見遠回りに見える取り組みこそが、会社の未来を守る力になります。


今回の出来事は、特定の企業だけの問題ではありません。

どの会社にも起こり得ることです。

だからこそ、

「うちには関係ない」

ではなく、

「もし自社だったら何が止まり、何を守れなくなるだろう。」

そう問いかける機会にしていただければと思います。


BCPとは、災害対策のための計画ではありません。

会社の「当たり前」を疑い、事業の脆弱性を見つめ、未来の会社を守るための経営そのものです。

私は、その積み重ねこそが、本当の意味での事業継続につながると考えています。

経営は、急がば回れ。遠回りに見える準備こそが、会社を未来へつなぐ一番の近道なのではないでしょうか。



 
 
 

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